前節は、両チームともに「執念」を魅せた。甲府は、開幕5連勝のC大阪が織り成す猛攻を決死の守備で凌ぎ、スコアレスドローでゲームを終えた。一方の草津は、4連勝の水戸にリードを許しながらも気迫のゴールで2-2へと持ち込んだ。3勝2分1敗の勝点11で5位につける甲府と、3勝1分2敗の勝点10で9位の草津。双方ともにリーグ序盤の3連勝後、白星をつかめていないだけに、今節で勝利をつかみ再び勢いをつかみたいところだ。昨季開幕5戦で4分1敗と大きく出遅れた甲府だが、今季は3連勝を記録するなど上々のスタートを切っている。大宮から移籍した森田浩史、鳥栖から移籍した金信泳、そしてマラニョンで構成される新3トップは発展途上だが、少ない得点をチーム全体の守備で守り、結果を導いている。前節も、C大阪・香川真司、乾貴士などJ2屈指のタレント集団が繰り出すアタックを食い止め、貴重な勝点1を獲得した。総失点はリーグ最少の2点。センターバックを中心とした堅守がチームの生命線となっている。草津戦のポイントとなるのは、3トップのシステムだ。攻撃的な戦術を選択する草津は、前節でも左サイドバック小池純輝が先制アシストを決めたが両サイドバックの攻撃参加が武器となっている。甲府の両ワイドが前線で優位を保ち、草津のサイドバックを抑え込めるかが今ゲームの重要なファクターとなる。前節・草津vs水戸戦後、水戸・木山隆之監督が「草津のセンターバックはもろいところがある」と語ったが、DFラインに揺さぶりをかけるには大西容平、松橋優の起用も面白いだろう。 甲府が総得点4総失点2と堅実なサッカーをみせているのに対して、草津は総得点10総失点9と豪快なサッカーを展開している。失点を恐れずに攻撃に出る草津のスタイルがハマれば、相手を一気に飲み込む破壊力を秘めている。佐野達監督が「リスクを背負って攻撃に出ることで、これまでのJ2スタンダードを変えていきたい」と話すように、敵地・小瀬でもアグレッシブなサッカーを貫くことだろう。草津の攻撃を牽引するのは6戦4ゴールを挙げ、得点ランクトップタイを走る大型ストライカー都倉賢だ。身長187センチの体躯に相応しい荒々しいプレーで次々とネットを揺らし、ゴール量産体勢に入った。もともと潜在能力の高さは知られていたが、今季、自信を手にしたことで大きな成長を遂げている。草津は、都倉のポストプレーで流れをつかむことが多く、甲府・ダニエルと、草津・都倉とのマッチアップの行方が、そのままゲームの主導権争いに直結する。甲府は前節、GK荻晃太が再三に渡る好セーブで窮地を救った。今季から加入した新守護神が最後の防波堤となりチームを支えている。対する草津の守護神・本田征治もチームに欠かせない存在だ。総失点こそ9点だが、的確なポジショニングで決定機を止め続けている。両者は04~06年の神戸時代のチームメート。06年は開幕戦で先発した本田のポジションを、2節から荻が奪う形になった。翌年から本田は草津へ移籍。荻は、大宮、F東京を経て今季・甲府へ加入した。今節は、3年ぶりに顔を合わせる両GKの対決となる。リーグ最少失点の甲府と、C大阪、湘南と並んでリーグ最多得点タイの草津。得点の動きの少ない試合になれば甲府、逆にゴールの奪い合いになれば草津のリズムと言える。両チームともに前節では、執念で勝点1を獲得した。「本当に大きな勝点1だったし、大きな試合だった」(安間貴義監督)、「今日は本当に選手の気持ちが入っていた」(佐野監督)。両指揮官はそれぞれにゲーム・選手を評価するコメントをしたが、今節で勝利をつかめばドローの価値がさらに高まる。今ゲームは、前節で魅せた執念を持続させたチームに勝点3が転がり込む。以上2009.04.09
Reported by 伊藤寿学